半身浴読書~187~
『廃用身』 / 久坂部羊、読了。
以前、BUBIさんのブログでちらっとこの本が登場していて、読んでみたいなぁと思っていました。
読んでよかった。すごく面白かった。
まずは、この本の主題である老人介護についての強烈な問題提起。そしてそれを行った漆原医師の内面の問題。
書き方がノンフィクション的なので、かなりリアルに感じてしまう。
老人のデイケア施設を運営する医師の漆原は、廃用身(麻痺により動かなくなってしまった四肢)を切断するという『Aケア』を考案する。このAケアにより、患者の生活の質は向上し、介護者の負担は軽減される。漆原の施設で、11名がこのAケアを受けるが、ついにマスコミに取り上げられることになり、当然のごとく激しいバッシングを受ける。
そして漆原は、手記を残し自死を遂げる。
手記の出版を勧めていた編集者の矢倉は、漆原の手記を基に、その後起こったことも含めて追記としてまとめ、出版する。
この矢倉の追記は、Aケアに至るまでの漆原の考えや、Aケアを受けたあとの患者の様子、そしてマスコミのいい加減な取材によるバッシング、そして何より、漆原自身の内面の問題に触れている。
老人介護の問題は、資源としての介護者をいかに効率よく確保するかということであると説明する漆原の考えには、共感できた。
また、マスコミ報道のいい加減さは、現実社会でもおそらくその通りだろうと思えるし、漆原の内面の問題も、そういう人は現実にいるだろうと思える。
Aケアが、近未来で実際に行われるとはわたしには思えない。しかし介護の問題は、もはや家族だけに押し付けることのできない問題になっているのではないかと思う。
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コメント
ふぅ~ん、廃用身ね~。
読んでみたいな…とも、怖いなとも。
糖尿病の患者で足が壊疽した(?)場合は、切断するらしいです。切断しないと命にマイナスだからの施術でしょうが、介護にマイナスだからってことでしょう?
回復見込みの無い植物状態の患者に、莫大な赤字を抱えている公が7割とか9割の医療費負担するのはどうかと思うところはあります。
投稿: 街中の案山子 | 2012.10.10 15:41
街中の案山子さん
ぜひ読んでみてください。
作中、この医師がはじめてAケア(切断)を行った患者は、家族に虐待されていた下半身不随の男性です。体が大きく体重も重いため、家族の介護負担は相当なもので、その結果、虐待という状態になってしまった。その虐待が原因で片足が腐ってしまい、命の危険さえあった人です。命を救うため片方の足を切断したところ、臀部にあったひどい床ずれが切断した側だけ直りました。それで、どうせ動かない足なのだからと、患者の申し出によってもう片方の足もAケアすることになったんです。
介護の問題は、虐待の問題とも切り離せないのだなあと感じました。
投稿: とと(>街中の案山子さん) | 2012.10.11 23:57
おじゃましまーす^^
「廃用身」読んでくれてうれしいです。
とても心に残る作品なので。
麻痺してしまった体を切ってしまう、というのは、すごく非人間的に見えるけど、切って軽くなった体の本人は、とても元気なんですよね。
動きやすくなるし、脚や手を失っても、その後の人生を生き生きと生きられるようになる。
これは小説だけど、実際あるんじゃないかって思えてしまいます。
安楽死の問題も、「ガンと闘うな」という話もそうだけど、本人にとって何が一番よいことなのか、考えさせられてしまいます。
投稿: BUBI | 2012.10.13 19:33
BUBIさん
面白い本を紹介していただいて、ありがとうございます。
廃用身を切断する治療は、確かにあり得る選択肢だろうと思いますが、わたしには現実的には思えなくて。
いくら廃用身とはいえ、親からもらった体を切断し、その後その姿に慣れ、さらに前向きに考えられるものだろうか、果たして老人が。。。と思ってしまいます。
安楽死は、わたしには願ってもない選択肢ですね。将来、認められるようになればいいなって思っています。そしたら年金もあまり出さなくてすむしね。
投稿: とと(>BUBIさん) | 2012.10.14 23:23
母は、入院中に、10キロ痩せました。廃脂肪を行ったと言うことでしょうか。不自由な身体に10キロ減は、良かったと。私も脂肪は、あやかりたいデス。苦笑
投稿: 街中の案山子 | 2012.10.17 07:34
街中の案山子さん
あはは♪
やっぱり身も心も軽いほうがいいですね。
うちは今、受験生を抱えて心が重いです(はぁ~)
投稿: とと(>街中の案山子さん) | 2012.10.18 23:14