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2011.09.18

半身浴読書~158~

41pq1366fbl__sl500_aa300_ 『風に舞い上がるビニールシート』 / 森絵都、読了。

   

    

    

短編集。入っていた作品は、次の通り。

  1. 器を探して
  2. 犬の散歩
  3. 守護神
  4. 鐘の音
  5. ジェネレーションX
  6. 風に舞い上がるビニールシート

一番好きだったのは、『鐘の音』だ。

仏像の修復を仕事にしていた二人の青年が、四半世紀すぎてようやく心を通わせる。そのときに言った、吾郎の言葉にすごく共感した。

「絶対にかなわへんと思うとった。あないな若さで確乎たる世界を持たはって、頑固に守っとったあんたがわしにはうらやましかった。松浦さんにまで盾つくあんたの不器用さも、器用貧乏なんぞと言われつづけたわしにはまぶしかったんや。そのあんあたが今、仏像の世界から足を洗うて温かい家庭を持たはって、子供好きのわしがとうとう子宝に恵まれへんで松浦さんの工房を継いどる。どっちが不運で、どっちが幸運なんか、ようわからへん」

そうなんだよね。何がラッキーで何がアンラッキーかは、死ぬときまでわからないものなんよね。

わたしの今の境遇も、何年か後に吉と出るか凶と出るか、誰にもわからないと思うことで、なんとか踏みとどまっていられるんだよな~。パワーのある人間なら、アンラッキーをラッキーに変えることもできると思うし。要は、心の持ち方次第ということかな。

   

全体では、非常に読みやすく淡々とした印象の作品集。

『ジェネレーションX』は、読後感の良いさわやかな作品だった。

『風に舞い上がるビニールシート』は、世界中の難民へ思いを馳せ手を差し伸べるエドが、里佳のふくらはぎに欲情するというギャップがいい。

体でつながり、心はすれちがう・・・でも離婚を決めたあとに、ふたりに平穏が訪れる。結局、結婚という形態が、里佳に『家庭とは、安らぎの場でなければならない』とか『妻は料理を作らねばならない』とか『夫婦は一緒にいなければならない』という思いを強く持たせたのだろう。それがエドには通じない。むしろ重荷だ。きっとエドが求めたのは、里佳のふくらはぎ。それ以外は何も求めていなかったし、自分たちが安全な場所にいて、風に舞い上がるビニールシートのように飛ばされてしまう弱い立場の人たちを見ないふりしまうことはできなかったのだ。それが価値観の違い。

別れを決めた二人の最後の朝のシーン、泣けた。

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