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2009.01.01

半身浴読書~110~

51bc0spn9xl__sl500_aa240_ 『最後の家族』 / 村上龍,読了.

以前書いたエントリー【この母親はわたしだ】で,Anneさんに紹介いただいて読んだ本.

話の進め方は,角田光代の『空中庭園』(半身浴読書~97~)みたい.ひとつの事象を,家族4人の視点から書いている.

これは,引きこもりの長男を持つ家族の話だ.そして,父親,母親,長男,長女の4人はそれぞれ悩みを持っている.

長男は,引きこもりである自分自身がすでに問題であり悩みなのだが,偶然見てしまった前の家の家庭内暴力が,自分の中では大きな悩みとなる.殴られている奥さんを助けたいと思い,さまざまな機関に積極的に相談する.そして,その『助けたい』と思う自分も,実はDVの加害者的思考であることに気がつくのだ.父親に暴力をふるう自分と,奥さんを殴る向かいの家の亭主と,何が違うのだ・・・.

長女は,元引きこもりの宝石デザイナーに,一緒にイタリアへ行こうと誘われる.そこで初めて,自分で選択する自分の進路について考える.いったんは行かないと返事をするが,その行かないという選択は,本当に自分で選んだものなのかどうか・・・.

母親の悩みは,当然息子だ.家庭に引きこもり,親に暴力をふるう息子.でも,母親は外部の専門家の助言を受けながら,少しずつ変わっていく.それは確実に長男にも伝わっている.一方,この母親には年下独身のボーイフレンドがいる.肉体関係は,まだない.けれど,当然夫や家族には言えない彼氏だ.しかし,このことについては,母親はそれほど悩んではいないようだ.母親にとっては,家族の問題がもっとも重要であるのだ.

父親も息子のことで悩んでいる.しかし,母親のように専門家の助言を受け入れることができない.自分の価値観が固定化されているし,引きこもりの息子を恥ずかしいと思う気持ちがきっとあるのだと思う.しかし,息子に殴られ脳震盪を起こし,救急車で病院に運ばれたことがきっかけで,妻の助言を受け入れるようになる.そして,リストラで職を失い,引きこもり始めたときの息子の気持ちや暴力をふるうときの気持ちに,はたと思い当たる.

4者4様に考えながら,自立していく家族.

家族の絆と依存の違いは,個人の自立にある.家族ひとりひとりが,気持ちの上で自立できること,そうでないと親と子が依存しあう<パッと見,仲のいい家族>ができてしまうんだろうな.

でも最後の結末,あれでいいの?一見よさそうだけど,自立した後,もう一度共生できるかどうか,それが大事なんじゃないかとも思った.

初めての村上龍作品だったが,とても面白く,いろんなことを感じながら読めた.Anneさん,ありがとう!

ただ,今,そういう状態にある人にはお勧めしたくない.なぜなら,この話の家族に簡単に自分を投影してしまう恐れがあるから.その場合,「うちは,大丈夫.うちはみな,自立している.なぜととさんは,こんな本をわたしに勧めるのかしら?もしかして,うちは自立してないと思ってるのかしら?」などと思われる確立は,かなり高い.

こういう本は,子供がまだ小さいうちに読むに限る.早速,妹に勧めてみるとするか.

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