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2006.07.08

半身浴読書~51~

025628860000 『サウスバウンド』 / 奥田英朗,読了.

元過激派の夫婦とその家族の話.設定はあまりにもドラマチックだけど,エピソードのいちいちが面白くて,ぐいぐい引き込まれてしまう

ストーリーは,この夫婦の息子上原二郎の目線で書かれている.二郎は小学6年生だ.その悪がきたちの目下の大問題は,不良中学生カツ.その問題を巡る彼らの行動はすごく興味深い.

問題というのは,まぁ,ありがちなカツアゲなんだけど,二郎はその要求をのみたくない.それは当然だよね.

で,いろいろ策を考えるわけだが,そのうち面倒になってカツに直接ぶつかっていく.その面倒になっていく感覚は,非常に共感できる.頭の中でグルグル考えていると,だんだんどうでもよくなってきて思わぬ大胆行動に出てしまうことは,意外に多い.みんなあるでしょ?そういう経験.

さて,この話の中心は上原一郎だ.二郎の父親で伝説の闘士.左翼の活動家として有名人だった彼だが,今は引退して毎日家でごろごろしている.でも口を開けば舌鋒するどく論戦を繰り広げる父親は,二郎にとっては迷惑なだけだ.

でも,それでも一郎は自分を曲げない.相手に合わせない.・・・・そこがいいのだ.

私たちは日々合わせている.何かに,誰かに,どこかに合わせている.だから一郎みたいな生き方に,どこか憧れがあるし胸がスカッとする.

読み進めていくと迷惑だけなだけだった一郎が,かっこよく見えてくる.

一郎は誰とも群れない.そこもいい.

左翼運動をしていたころもあったけど,内ゲバを繰り返す彼らに嫌気がさす.しかもグループを作った途端左翼運動という理想を離れ,一部の人間の権力や立場を守るための運動に変わっていくことにもうんざりなのだ.

イデオロギーの対立が薄れた今,左翼運動は環境保護や人権擁護に形を変えている.

そして一郎たち家族は,環境保護運動に巻き込まれていくのだけれど,最後まで個を貫く姿はやっぱりかっこいい.

成熟した社会というのは,成熟した個の集まりなんだろうな.個があやふやで強いものや大きいものに合わせることしかできないときには,恣意的な操作は容易だ.

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。この本去年あたりに読んで、ブログに書いていると思うのでTBさせてください。
その後、数冊読みました。世代的に似ていることもあり、人を捉える深さに暖かさと誠実さ、そして独特の孤立感を嗅ぎ取れて、好きです。筆が立つというか、滑らかで、読みやすい、そこのところを心得ている物書きさん、でもあります。

投稿: 街中の案山子 | 2006.07.09 08:05

去年の8月18日と23日、2回も取り上げています(だらだらと文を書く癖→わたし)。
なお、今年の4月21日にも、同作者の精神科医シリーズの「町長選挙」を取り上げています。
時間がありましたら、お立ち寄りください。
2回コメント、相すみません。

投稿: 街中の案山子 | 2006.07.09 08:22

>街中の案山子さん

コメント,TBありがとうございます.

この人の本は,他に『空中ブランコ』(半身浴読書~28~)を読んでます.そのときあまり奥行きを感じなくて,少し遠ざかっていたんだけど,この本は読んで正解!面白いですね.

今度は『町長選挙』・・・.早速メモっておきました.
(*^o^*)

投稿: とと | 2006.07.09 22:48

>街中の案山子さん

あれ?
上のコメント入れてから,今年4月の『町長選挙』のとこに行ったのだけど,★2つなんですね.
(-""-;)ムム・・・
でも読んでみなきゃわからないですし,『インザプール』とともにメモいたしました.

投稿: とと | 2006.07.09 22:59

コメントありがとうございます。
奥田さんの小説は初めて読んだのですが、リズムがよくて楽しく読めました。また、別の小説を読もうとおもうのですが、

> 『空中ブランコ』(半身浴読書~28~)を読んでます.そのときあまり奥行きを感じなくて

なのですよね。むむむ。

投稿: ayustety | 2006.07.10 07:28

上記にでている本は全部購入して読みました。
伊良部医師シリーズは1冊、2冊目の方がいいと思う。
奇想天外っぽいけれど、あわれが滲んでいるし。
それから「マドンナ」も読んだけれど、文章が上手いから、すっと読めます。根が暖かいからいいですよ。但し、図書館で借りたほうがいいかな。←余計なお世話?(笑い)

投稿: 街中の案山子 | 2006.07.10 19:06

>ayustetyさん

私は元々短編が苦手なので,『空中ブランコ』にそういう印象を持ったのかなとも思いますが.
サクサク読めて,途中でニヤリとできる本ですよ.


>街中の案山子さん

私はいつも図書館で借りてくるんです.家が狭いのでこれ以上置くところがなくて・・・.
『マドンナ』も読んでみなきゃ.(^^)

投稿: とと | 2006.07.10 22:52

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» 昨日から読み出した本「サウスバウンド」 [街中の案山子]
著者奥田英朗、直木賞受賞第1作と帯には書いてあります(私は受賞作は読んでいません)。 東京中野界隈の小学6年生二郎と仲間達。ゲームセンターがあったり、携帯電話を使ったりは今時だけれど、繰り広げられている世界は子供の事情で目いっぱい真剣だ。八方塞を乗り越えるためにあらゆる知恵を絞っているところが、どこかでであった物語と共通していて懐かしい。但し、この二郎君に元過激派という父親が立ちはだかっていて、世間の論理が通じない。 理屈では通らな�... [続きを読む]

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昔、過激派だった変わり者の父・一郎を持つ小学六年生の二郎。彼の視点から描いた、東... [続きを読む]

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