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2006.03.29

半身浴読書~39~

025637320000 『海の底』 / 有川浩,読了.

こ・これは・・・・,文句なく面白いっ!

久しぶりに,『早く読みたいけど読み終わるのが寂しい』って思える本に出会ったよ.

まさに読み終わるのが寂しい本.だって,登場人物がみんな,いいヤツなんだもの.ここが,重松清の書く本と違うところだ.まさに,エンターテイメント

ここから先は,ネタバレありますので読みたくない人は,ここで引き帰してね.

      

横須賀を襲ったサガミ・レガリスを撃退するため,警察や潜水艦に取り残された自衛官たちがどんな風に頑張ったのかという話.

そりゃ,設定自体あり得ない話ですよ.ええ.

私はこういったあり得ない話,いわゆるSF系は苦手なのでありますが,なぜかこの本には初めから吸い込まれたのである.

それは,物語の初めから非常に劇的なシーンが見せられたから.自衛官と一緒に潜水艦に立て篭もることになった子ども達を助けるため,潜水艦の艦長が犠牲になったのだ.残されたのは,片腕だけ.それ以外は全て,レガリスに食われてしまった

この尊い命と引き換えに生き延びた子ども達を,二人の自衛官は必死に守る.

この子どもの中に,高校生の女の子がいる.望という名前だ.

彼女が閉じ込められてすぐに生理になってしまうのだけど,予想外のことだったために下着や洋服やマットレスを汚してしまう.男性しかいない潜水艦でそれはすごく恥ずかしいことだ.恥でもなんでもない女性として当然のことなんだけど,望の恥かしさはとてもよくわかる

そんなとき,夏木と冬原はさりげない態度と精一杯の配慮で,とても好感が持てるのだ.二人のキャラを表現するのに実に上手いエピソードだ

その後,ヘリコプターでの救出が図られるが3回とも失敗.でも夏木達は3回目の失敗を初めから予想し,救出ができないなら必要なものを降ろしてくれと頼んでいた.

その中にはもちろん生理用品も含まれていて,女性自衛官の手紙まで同封してあった.それを読んだ望は胸を熱くしたのだけど,そりゃあたしもだよ.私も胸が熱くなりました.

またこの子ども達の中に,圭介という中学生がいる.こいつがまた,ほんとに嫌なガキで余計なことばかりするんだけれど,最後,自分を自分で笑い者に仕立てることで,夏木を守ったのだ.

そのことを圭介の両親は理解できない.でも,圭介がさんざんパシリに使っていた友達はちゃんと理解し,声をかけてやる.それを見ると(正確には読むと),それまで圭介にムカついていた私もちょっと彼のことを見直すと同時に,安堵もした.

『さも有りなん』なのは,自衛隊の出動を決められない政治の様子だ.読みながらイライラしたし,警備担当の警察官・明石や機動隊の滝野が言う『仕方がありません.我々は,そういう国の役人ですから』には,ほんとにその通りだと頷いてしまった.

思えばこの本には,悪い人は出てこない.

特定の個人には悪人はいない代わりに,『決断の遅い官邸』や『米軍の言いなりの政府』・『誤爆で民間人を殺したのになかったことにする米軍』・『子どもの話を鵜呑みにして,ありもしない虐待話にのるテレビ局』・『救出された望が,自衛官に何かいやらしいことをされていた方がニュースになって良かったとも言いたげなバカな記者』・『自分のことしか考えていないバカな母親』が,皮肉たっぷりに書かれていて,ムカついたりスカッとしたりする.

しかもこれらはみな,現実にありそうな話だし.

最後は少し甘酸っぱい締めくくりで,これもまた良し!なのだ.

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